最近ご飯を食べるのが辛そう、水を飲みたそうなのにじっと水をみつめている、よだれが多くて顔が汚れている、撫でられるのが好きなのに触ると嫌がったりすることなどありませんか?それらは口の中が痛かったり、全身の病気のサインかもしれません。今回は猫で多い口腔内のトラブルについてお話します。
猫の歯肉口内炎
歯肉や口腔粘膜に激しい炎症を伴う難治性の疾患です。
実は日本ではこの疾患の名称はいまだに確定しておらず、米国では尾側口内炎という名称で統一されてきています。
現在、日本では歯肉口内炎という名称が広まってきているので当院では歯肉口内炎という名称を用いています。
臨床症状
・よだれが出る
・口が臭ってくる
・飲み込むのがつらそう
・元気食欲が低下してきている
・被毛がよだれで汚れている
・その他、口の痛みに伴う症状
(食事時の痛み、怒り易くなった、寝ている時間が増えた 等)
原因
・複数の要因によって発生している可能性が高く、猫の歯肉口内炎の原因は今のところ確定していない。
・歯垢内の細菌に対する過剰な免疫反応が疑われている。
【考えられる複数の要因】
・細菌
・猫白血病ウイルス
・猫エイズウイルス
・猫カリシウイルス
・その他のウイルス(猫ヘルペスウイルス等)
・過剰な免疫反応による激しい炎症 等
猫の歯肉口内炎に対する治療~根本的な考え方~
口が痛い原因は猫によって様々です。
下記のどの点に重点をおくかで不必要な治療を減らすだけでなく、よりよい改善が期待できます。
①基礎疾患があるのかどうか
②悪さをしている口腔内細菌を減らす
③ウイルス感染に対するアプローチ
④過剰な免疫反応を抑える
治療方法
外科的治療(抜歯)
全身麻酔が必要になりますが、歯肉口内炎の治療で完治や改善が認められる最も効果的な治療法とされています。口腔内の感染があごの骨まで波及してしまったりしていると抜歯に対する治療効果が落ちてしまうことが報告されていますので、なるべく早期に行うことが重要となります。
内科治療
一時的に症状の改善が見られますが完治はしません。数日ないし数週間~数ヶ月で再び悪化することがあります。また、次第に治療効果が低下してくることも多いため多方面からのアプローチが非常に重要です。
・基礎疾患に対する治療(①に有効)
・適切な抗生剤の使用(②に有効)
・適切なステロイド剤の使用(④に有効)
抗生剤、ステロイド剤は治療効果は高いですが長期連用投与は予後が悪くなりやすいです。
・インターフェロン治療(③④に有効)
・口腔内善玉菌製剤(②に有効)
・ラクトフェリン(②③④に有効)
・デンタルリンス・ジェル(②③④に有効)
治療プランの作成にあたって
当院ではオーナー様と下記のことを相談してから治療を行っています。
A.歯肉口内炎の程度
・ご飯を食べれない?食べれる?
・猫ちゃんがどのくらいつらいのか。
・他に疾患が併発していないか。
(腎不全等の悪化により口腔の状態が悪化していた症例もあります。)
B.オーナー様のニーズ
・完治するのは難しい疾患のため、明確な治療目的の共有。
C.猫の受け入れ状態
・投薬ができるのか?
・病院に来ることへのストレスはどのくらいなのか。
口が痛そうだからとりあえず薬を使うのではなくA、B、Cをオーナー様と獣医師で共有して治療プランを作製することにより、改善・状態のコントロールが長期にわたって期待できます。
猫の歯肉口内炎 まとめ
・現在の獣医療では原因がわかっていない。
・一つの薬で立ち向かうのではなく多方面からのアプローチが有効な場合が多い。
・一時的には良化が認められるため安易に使用しがちであるが長期的なステロイドの治療は副作用発生のリスクが高くおすすめされない。
・個々の治療の明確な目的を設定しておくことで不必要な検査や投薬、猫が感じるストレスを減らせる。
・完治が期待できないことも多いため副作用も加味した病気との付き合い方を相談していきましょう。
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■院長 田代 雄太郎
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